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コーヒーの精製処理方法:乾燥プロセスの違いと品質への影響

コーヒーの精製処理方法:乾燥プロセスの違いと品質への影響

コーヒーの精製処理とは

コーヒーチェリーから生豆を取り出す精製処理は、コーヒーの風味を決定づける最も重要な工程の一つです。各処理方法は、使用する水の量、乾燥時間、そして最終的なカップクオリティに大きな影響を与えます。

主な精製処理方法

1. Washed(ウォッシュド)/ Fully Washed(フルウォッシュド)

工程:

  • 収穫後、パルパーで果肉を除去

パルパーでチェリーを処理

パルパーによる果肉除去

パルパー処理工程


  • 発酵槽で12~48時間発酵させ、ミューシレージを分解
  • 大量の水で洗浄し、ミューシレージを完全に除去
  • パーチメントの状態で乾燥(10~14日間、水分含有量11~12%まで)

発酵槽

発酵槽の水洗工程

発酵槽でのパーチメント

発酵後のパーチメント

フルウォッシュドプロセスのパーチメント

特徴:クリーンで明瞭な酸味、豆本来の特性が際立つ風味プロファイル

主な生産国:コロンビア、ケニア、エチオピア、中米諸国

2. Semi Washed(セミウォッシュド)

工程:

  • 果肉除去後、発酵工程を短縮または省略
  • 機械的にミューシレージを部分的に除去
  • 残ったミューシレージと共に乾燥
  • パーチメントの状態で水分11~12%まで乾燥完了後、脱殻

特徴:ウォッシュドとナチュラルの中間的な風味、ボディと酸味のバランス

主な生産国:ブラジル、中米諸国

3. Pulped Natural(パルプドナチュラル)

工程:

  • 果肉のみを機械的に除去
  • ミューシレージを残したまま乾燥
  • 水洗工程なし
  • 乾燥期間:15~25日間

特徴:甘みが強く、ボディが豊か。ナチュラルよりクリーン

主な生産国:ブラジル(最も一般的)

4. Honey(ハニープロセス)

工程:

  • 果肉除去後、ミューシレージの残存量で分類
  • White Honey:ミューシレージ10~25%残存
  • Yellow Honey:ミューシレージ25~50%残存
  • Red Honey:ミューシレージ50~75%残存
  • Black Honey:ミューシレージ75~100%残存
  • 乾燥期間:10~30日間(残存量により変動)

ハニープロセスの乾燥工程

特徴:複雑な甘み、フルーティーさ、滑らかなボディ

主な生産国:コスタリカ、エルサルバドル、ニカラグア

5. Natural(ナチュラル)/ Dry Process(ドライプロセス)/ Unwashed(アンウォッシュド)

工程:

  • チェリーをそのまま乾燥
  • アフリカンベッドまたはパティオで天日乾燥
  • 乾燥期間:3~6週間
  • 定期的に攪拌し、均一に乾燥させる

コーヒーチェリーの天日乾燥

特徴:フルーティーで複雑、重厚なボディ、ワインのような風味

主な生産国:エチオピア、イエメン、ブラジル

国・地域による処理方法の違い

ブラジル

パルプドナチュラルが主流。広大な平地と機械化により大規模生産が可能。近年はナチュラルプロセスも増加傾向。

コロンビア・中米

伝統的にフルウォッシュドが中心。近年はハニープロセスやエクスペリメンタルプロセスも増加。

エチオピア

Unwashed(アンウォッシュド/ナチュラル)とWashed(ウォッシュド)の両方が伝統的。地域により処理方法が異なる(イルガチェフェはウォッシュド、シダモはアンウォッシュドなど)。

※エチオピアでは伝統的に「Unwashed(アンウォッシュド)」という呼称が使われており、これは他の地域で「Natural(ナチュラル)」や「Dry Process(ドライプロセス)」と呼ばれる処理方法と同じものです。Washed(水洗式)との対比として「水洗いしていない」という意味でこの名称が定着しています。

インドネシア

独自のウェットハル(Giling Basah)方式を採用。高湿度環境に適応した処理方法で、独特の風味プロファイルを生み出します。

ウェットハルとセミウォッシュドの違い

ウェットハルは、セミウォッシュドと混同されることがありますが、脱殻のタイミングが決定的に異なります。

ウェットハル(Giling Basah)の特徴:

  • パーチメントの状態で水分含有量がまだ高い段階(30~35%)で脱殻を行う
  • 生豆の状態で乾燥を続け、最終的に水分12~13%まで乾燥
  • 湿った状態での脱殻により、豆が独特の青緑色を帯びる
  • アーシーで重厚なボディ、ハーバルな風味が特徴
  • 高湿度のスマトラ島の気候に適応した方法

セミウォッシュドとの比較:

  • セミウォッシュド:パーチメントの状態のまま水分11~12%まで完全に乾燥させてから脱殻
  • ウェットハル:パーチメントが湿った状態(水分30~35%)で脱殻し、生豆の状態で乾燥を完了

この違いにより、ウェットハルで処理されたコーヒーは、他の処理方法では得られない独特の風味プロファイルと外観を持つことになります。

ミューシレージ除去方法の進化

デミューシレージ(Demucilage)方式

中米や南米の一部地域では、デミューシレージという機械的なミューシレージ除去方法が採用されています。この手法は従来の発酵槽を使った水洗処理に代わる方法として、数十年前から実践されており、環境負荷の低減と品質の安定化に貢献してきました。

デミューシレージマシン

デミューシレージマシンの内部

デミューシレージの特徴

  • 機械的除去:デミューシレージャー(デミューシレージマシン)を使用し、パルピング後のパーチメントからミューシレージを機械的に剥離
  • 水使用量の大幅削減:従来の水洗処理と比較して、水使用量を80~90%削減可能
  • 処理時間の短縮:発酵工程(12~48時間)が不要となり、処理時間を大幅に短縮
  • 品質の安定化:発酵による品質のばらつきを抑え、より一貫した品質を実現
  • 環境負荷の低減:発酵槽からの汚水排出が大幅に減少

デミューシレージのプロセス

  1. 収穫したチェリーをパルパーで果肉除去
  2. デミューシレージャーに投入し、機械的摩擦でミューシレージを剥離
  3. 少量の水で洗浄し、残留ミューシレージを除去
  4. パーチメントの状態で乾燥工程へ

デミューシレージの利点と課題

利点:

  • 環境に優しい持続可能な処理方法
  • 水資源が限られた地域でも高品質なウォッシュドコーヒーの生産が可能
  • 労働力と時間の削減
  • 汚水処理コストの低減

課題:

  • 機械設備への初期投資が必要
  • 適切な機械調整が品質に影響
  • 完全なミューシレージ除去には複数回の処理が必要な場合も

乾燥工程の重要性と温度管理

乾燥工程は精製処理の中で最も繊細な管理が求められる段階です。特に乾燥初日と二日目の温度管理が極めて重要で、この期間の温度設定がコーヒーの最終的な品質を大きく左右します。

乾燥初期(1~2日目)の重要性

  • 細胞構造の保護:初日と二日目は豆の細胞壁が最も脆弱な状態。急激な温度上昇は細胞を破壊し、風味の劣化を招く
  • 推奨温度:初日は30~35℃、二日目は35~38℃と段階的に上昇させる
  • 水分移動の制御:初期の緩やかな乾燥により、豆内部から表面への水分移動が均一に行われる
  • 発酵の抑制:適切な温度管理により、望ましくない発酵を防ぎつつ、風味の発達を促進

乾燥全体の温度管理

  • 最高温度:パーチメント温度40℃以下が望ましいとされている
  • 夜間の温度低下:急激な温度変化は避け、徐々に冷却
  • 湿度とのバランス:温度だけでなく相対湿度も50~60%に管理
  • 乾燥速度:1日あたり1~2%の水分減少が理想的

乾燥方法による温度管理の違い

  • 天日乾燥:日中の直射日光を避けるため、初期は日陰や遮光ネットを使用
  • 機械乾燥:温度センサーで常時モニタリングし、初日と二日目は特に低温設定
  • ハイブリッド方式:初期は天日、後期は機械乾燥で安定化

水洗処理における汚水処理

ウォッシュドプロセスでは大量の水を使用するため、環境への配慮が不可欠です。

汚水処理の課題

  • 1kgの生豆生産に約40~150リットルの水が必要
  • 発酵槽からの排水は高濃度の有機物を含む
  • 未処理のまま河川に放流すると生態系に深刻な影響

現代的な汚水処理方法

  • 機械的ミューシレージ除去:エコパルパーやデミューシレージャーの使用で水使用量を90%削減
  • バイオフィルター:微生物による有機物分解システム
  • 沈殿池システム:多段階の沈殿・濾過プロセス
  • 水の再利用:処理水を灌漑や初期洗浄に再利用
  • コンポスト化:果肉やミューシレージを肥料として活用

コーヒー果肉のコンポスト

 

まとめ

コーヒーの精製処理方法は、最終的なカップクオリティに決定的な影響を与えます。各処理方法には独自の特徴があり、気候条件、インフラ、そして目指す風味プロファイルによって選択されます。特に乾燥工程における初日と二日目の温度管理は、豆の品質を守る上で最も重要な要素の一つです。


AMBER & JADE ROASTERSでは、25年以上の経験とCup of Excellence国際審査員としての専門知識を活かし、各処理方法の特性を理解した上で最高品質の豆を選定しています。環境への配慮と品質管理の両立が、真のスペシャルティコーヒーを生み出す鍵となります。

次回コーヒーを淹れる際は、その豆がどのような精製処理を経てきたのか、ぜひ思いを馳せてみてください。